現代でも一般に使われている「ロボット」という言葉は、1920年頃にチェコの作家カレル・チャペックが書いた戯曲『R.U.R.』で世に出ました。もっとも、名付け親はチャペック本人ではありません。
呼び名を決めかねていた彼が相談に行くと、絵を描いていた兄のヨゼフが筆を口にくわえたまま、ロボットとでも呼べばいい、とだけ答えたと、カレル自身が書き残しています。もとのチェコ語 robota は、農奴が領主に負っていた賦役を意味する言葉でした。
兄が画家なら、弟のカレルもまた、文章だけでなく絵も描く人でした。印象的なカレル・チャペックの絵として、イギリスの旅行記『イギリスだより』に添えられた自筆のスケッチがあります。
1924年、カレルはロンドンのペンクラブに招かれ、大英帝国博覧会の取材もかねて、2ヶ月間イギリスに滞在します。イングランド、スコットランド、ウェールズと旅行し、そのあいだ新聞に送りつづけた紀行が『イギリスだより』(1924年)です。彼らしい文章で綴られた旅行記には、カレル本人のシンプルな挿絵がいくつも添えられています。
カレル・チャペック『イギリスだより』(挿絵)
たとえば、その一枚が、ユーモアたっぷりに描かれた、この社交場で新聞を読んでいる人の絵です。誰とも喋らない。寡黙に、ただじっと新聞とにらめっこをしている紳士。こういった空間が、カレルにとってはなんとも不思議なもののに映ったようです。
この絵からもわかるように、決してうまく描こうというわけでもなく、だからと言ってヘタウマというのでもなく、気負っていないためか、作者の眼差しが素直に伝わってくる、そんな画風と言えるかもしれません。